たのしみサックス

サックス愛好家の皆さんを応援するブログです

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7月の記-その1

コメダのミニシロノワールコメダ珈琲店は名古屋発祥の喫茶店です。北海道にも19店舗もあるようです。店内は名古屋と変わらず、ここに入ると名古屋にいるような錯覚が起こります。逆詐欺(写真より大盛となっている)でも話題になっていますね。札幌でも人気がありどこも混んでいて、私にとって懐かしくなる場所です。

バリトンサックスのはなし

結論から申し上げますと、「ちゃんと調整されている楽器はしっかり鳴る」という当たり前のことを改めて実感したというおはなしです。バリトンがうまく吹けない、と悩んでいる方いませんか?もし、アルトが問題なく吹けていてバリトンはどうしても吹けないのなら楽器に原因があることは間違いありません。バリトンを吹きこなすコツは色々ありますが、本来アルトのように楽に音が出せるはずなのです。二度も「吹けなくなってしまった」とへこんだ私のバリトン体験談を聞いてください。長いですのでお暇なときに。

音大生時代

大学2年生からアンサンブルではバリトンサックスを担当していました。アルトがとてもへたくそだったのですがバリトンはそこそこ吹けたので腐らず生きていけたと言っても過言ではないでしょう。師匠がバリトン吹きだったのでたくさん演奏を聴いて真似して色々な四重奏曲を吹きレッスンしていただきました。どれもこれも貴重な経験でした。もちろん大学の備品サックスは先生の選定品(全てセルマー)だったのでバリトンサックスの状態も抜群によかったのでしょう。吹きやすい楽器だったからこそ楽しく上達していけたのです。

札幌時代

卒業して地元に帰ってもアンサンブルでバリトンサックスを吹きたかった。しかし、簡単に買える金額ではありません。しばらくして、サックス仲間が持っていたセルマーバリトンを安く譲ってくれるというありがたいお話をいただき、私の札幌でのバリトンサックスの活動が始まりました。

思い通りに吹けなかった

その楽器はバリトン吹きであるTさんの選定品で間違いないはずでしたが、少し苦しく学生の頃に吹いていた感覚では吹けませんでした。やはりしばらく吹いてないうちにバリトンが下手になったのかとがっかりし、マウスピースをあれこれ試し、練習し、なんとか取り戻そうともがいていました。

調整で生まれ変わった

マウスピースをセルマーからルソー(当時吹いている人が多かった)に替え、なんとか吹いていたころ、楽器店での調整会に野中から来たリペアマンさん(その後、ずっとお世話になりました)に診てもらい、チャチャっと調整してもらったら、なんと吹きやすいことか!びっくりするほど変わったのです。マウスピースもセルマーに戻しました。まさに、学生の時に吹いていた感覚。そのリペアの方が「Tさんはパワフルだから抵抗感が強い。キーの空き具合を少し狭くした」というような内容をおっしゃっていたと記憶しています。そこからは絶好調(私調べ)でアンサンブル活動をしていきました。

やり切った気がした

ご縁があり名古屋へ行く直前、「もうアンサンブルをしないでもいいか」と、バリトンを当時の勢いのある生徒さんに譲りました。今考えると少し惜しいことをしたかも。しかし、新しいオーナーさんが大事に使っていてくれたと思います。

名古屋時代

生活の軸ががらりと変わり、家庭が中心になった名古屋の生活。ヤマハ講師以外の活動はもうやらない(できない)と思っていましたが…

またカルテットの活動を始めた

大学時代の先輩で友人のSちゃんからお誘いを受けて、またやることにしました。なんだかんだ言ってカルテットは楽しいですからね。気の合う女性4人のグループで年一度のライブ開催を軸にまた活動が始まりました。バリトン奏者はすでにいたので、テナーでの参加になりました。テナーなんて中学生ぶり。またこのテナーでもとても苦労していくのですが、また別の機会にお話しさせてください。

バリトン吹くチャンスが訪れた

テナーがホントに難しい。うまく吹けないなか、バリトンのNちゃんが産休に入るというので、一時的にバリトンを吹けることになりました。「テナーはいまいちだけどバリトンは得意よ!」と張り切り、夫に頼み込みバリトンを購入。セルマーがいいに決まってるけど新品で120万(今は同じシリーズ2で170万!)もするし中古はない。ヤマハの62にすることにしました。その当時のヤマハバリトンの上位機種であり、プロでも使っている方がいるし問題はないと思いました。

またもや思い通りに吹けなかった

当時、そんなに本数がない(今は全然ないらしい!)中、2本用意していただき30分ほど吹いて決めました。購入後、改めてじっくり吹いていくと、あれ?吹きにくい…。私、昔からマウスピースなど選定してお金を払ったとたんにさっきと違う!ということが多々ありまして、またやってしまったかと。しかも、こんな高い買い物!また迷走の旅が始まったのでした。

1回目のバリトン本番は神頼み

その頃の心情を当時運営していたブログに載せていました。理想とかけ離れた音。まったく思い通りに吹けません。マウスピースをあれこれ替えてみたり、そんなことに多くの時間をとられました。最後は頑張った私に神様がご褒美をくれたと思っています。

こちら2016年6月19日の記事です。

そしてこれが私のバリトン最後の仕事でした。

あんなに得意と思っていたバリトンサックス。
アルトよりよっぽど吹けていたと思う。

それなのに久々に吹いてみたら全然ダメでした・・・。

理想の音色や表現なんかがあるものだから余計にもがきました。

長く吹いていない間にアルトやテナーのセッティングも大きく変わったもんだから、当然アンブシュアなども変わっており、昔と同じセッティングでは吹けなくなっていて当たり前です。

マウスピースを変えリードを変え、試行錯誤色々やってみました。

そして、この日理想通りのセッティングにギリギリ間に合ったのです。

なので思い残すことなく卒業できました(ノД`)(大げさな!!)


結局は昔最後に吹いてた頃のセッティングと同じになりましたよ。
要はものすごく練習した結果なのです。
練習したから口が馴染んできた、ということではないかと思っています。

マウスピースやリードを変えるという無駄な時間を過ごしたようで無駄ではない。

なんか神様が

「あんた、色々苦労して遠回りして頑張ったね。
ご褒美によい結果をあげる!」

と言ってくれているような。

そうやって今まで色々なことに(自分なりに)満足する結果を出してきたような気がします。

まあまあいい演奏ができたとはいえ、実際はだましだまし吹いていました。大きい音を出せばひっくり返るし、いつ調子が悪くなるかわからない。本当に神頼み。もっと吹けたははずなのに!いや、これが私が最大限出せる実力かと諦めたのです。

2回目のバリトン本番は悟り

それから三年後、2019年夏ごろです。それまでもちろん使ってはいました。慰問演奏で吹いたり生徒さんに貸してアンサンブルしたり、軽い曲を吹く分にはそれほど問題ありませんでした。ただ、大曲をライブで長時間演奏するとなると思い通りに吹けないのです。絶対上のほうに隙間があると思う。結構パワフルに吹くのでその勢いでキーが浮くのでは?(そんなバカな、ですが)とあれこれもがきながら練習していました。マウスピースもこの間に2本(実は前回も1本)買いました。もちろん、これまでもリペアは何度もしてもらっています。バランスを調整してもらい、その場では吹けるのですが長時間吹くとだんだんとどこか上のほうに隙間ができる感じなのです。一か所、自分で原因を突き止めフェルトを挟み調整もしてみました。

赤いフェルトの部分です。この下の小さなキーが少し動く(せいで隙間ができる)のが解消し、かなり吹きやすくなりました。しかし、完璧ではなくまだ他に原因があるようにしか思えませんでした。その本番、ライブの序盤はなんとか乗り切ったものの、終盤では音が出なくなってくるは、ローC♯キーはベタつきくっついてくるはでさんざんでした。このレベルの曲を長時間吹きこなすにはやっぱりセルマーじゃなきゃダメなのか?ヤマハを使っているプロはかなりカスタマイズしているに違いないと思い、もうこの楽器は備品としてレッスンで使う程度なんだと理解することにしました。

そして現在

この前、久々に持ち出して吹いてみました。上げてるYouTubeバリトンパートを生演奏で録音し、レッスンで使えないかと思いまして。軽いポップスばかりだし、いけるだろうと気軽に吹き始めると…

また吹いてみたけどやはり…

やっぱり吹けない…。腕が衰えてるのはもちろんあるでしょうが、そんな原因ではないのです。音がまとまらない、締まらない、伸びない。なによりバリトンの真骨頂であるブンブン吹きができない!またもやマウスピースをとっかえひっかえしリードも色々試し、これか!と思ったセッティングで吹いていくと30分もすると低音がひっくり返ってくる。絶対楽器に原因があるでしょう、これ~!と再度札幌の修理屋さんに持っていくことにしました。今回は初めて問題がある個所を書き出し、特に上の方を見てほしいとメモを渡しお願いしました。

調整が終わったが…

仕上がったと連絡があり、バランスが悪くなっているところは調整したが上の方のキーには特に問題なかった、と言われました。時間が経って調子が悪くなるなら試奏室でしばらく吹いてみて、と言っていただき、色々な楽譜を持って引き取りに行きました。最初は調子よく吹けていましたがやはりしばらくするとひっくり返ってきます。すぐさまリペアの方に「これ!今この状態!」と吹いて聴いてもらい原因を探っていくとやはりオクターブキーに原因があるようでした。

ここをぐっとふさいでもらうと音がしっかり鳴る

もちろん、調整時にしっかりふさがっているのは確認済でしょう。色々吹いていくと何がどうなるかよくわかりませんがほんの少し浮いてきていたのだと思います。このキーに関連する他のキーの動きも少し鈍いところもあり、今一度、ここを中心に調整してもらうことにしました。ほぼ原因がわかりました。これが直ればまた私に楽しいバリトンライフが?しかし、これは個体差でどうしようもない、ということもあるだろうと覚悟もしていました。そうなったら手放すか…

その後、劇的に生まれ変わった!

連絡をいただき引き取りに。その場で吹かせてもらったら明らかに今までの鳴りと違うと感じました。問題の個所を少し固めにした、ということを聞きました。持ち帰りスタジオを借りてじっくり吹いてみると…、ものすごく吹きやすくなってる!確実に音が鳴っている感覚、しっかりキーがふさがっているのがわかりました。低音のひっくり返りは時間差でくるからまだわからない。いや、そんなことより全体の鳴りが格段によくなっています。軽く吹けるし音は伸びる。ピアノもフォルテもよく鳴る。音のつながりがいい。それから一時間半ほど途切れなくブリブリ吹きまくりましたが、まったく問題ありませんでした。その場でリペアのお店にお礼の電話をし、今までのことを振り返り、名古屋での本番を全てもう一度やらせてくれ!となり、同時に時々貸していた生徒さんたちに申し訳ないことしたな、と思いました。いや待て、あと2回くらい吹いてから判断しよう。またダメになるかも、と冷静になりましたけども。

樹脂リードもいける

現在、ソプラノからテナーまで全て樹脂リードを使っています。100点満点は出ないけど常に70点は取れるリード、そんな印象です。何よりリードにかける時間が減りその分練習に時間をかけられる。もう手放せない存在なのですが、バリトンだけはしっくりこない。合わないのかな?バリトンこそ樹脂リードで吹きたいのに。1枚だけとっておいた葦のリードを付けた時の鳴りのいいこと!無理して樹脂を使うことないかな?でもお金かかるな、とあれこれ考えていたのですが、これなら全然いける!割といい音も鳴ってるし問題なさそう。バリトンのリード、5枚で5千円近くしますからね。全部鳴る保証もなし。今後バリトンも樹脂リード(レジェールシグネチャー)でいけそうです。よかった~。

さらに一か所ネジ締めて解決

次の練習二日後、吹き心地が変わってませんように、と祈る気持ちで吹き始めましたが、え?それほどでも?神様よ、上げて落としてくるねぇ。まあ、以前に比べればそりゃいいけど、おとといほどの鳴りではない?あ、リードを替えたな。戻してみよう。え?下のC♯ひっくり返る?もうひとつのマウスピースに替えてみよう。あれは夢だったの?時間が経ったからまた浮いてきたか?オクターブキーをふさいで確認したいが手がたりない。輪ゴムある?ない!わたわたしているうちに終了時間が迫り、最後にもう一度確認。ローC♯はひっくり返るけど、でもその下のCはしっかり鳴ってる。もしや…

と思い、このネジをちょっとだけ締めると、鳴る!とここで時間切れ。また二日後にスタジオを借り確認したところ、しっかり鳴る。よかった。その後吹き続けるとやはり全体的に若干キーが浮いてくるような感覚。気のせい?やっぱり振動とかでバランスが崩れていくのだろうか。しかし原因がわかってると冷静に対処できます。吹き心地のレベルが高くなっているのは間違いありません。ここからは私自身の問題でしょう。練習あるのみ。ストレスが減り練習が楽しくなってきたし、悩んでいる余計な時間を取られないので大変はかどります。また調子が悪くなったとしても直ることがわかったのでますます練習に励もうと思いました。

メーカーは関係ない

ヤマハ(安め)だからダメではなかった。疑ってすみません。多分通常の状態になったのだと思っています。とても吹きやすく充分いい楽器でした。値段の高い楽器はそりゃいいのが大前提かもしれませんが、高くてもダメな場合もある(だからこそ選定が大事)。安めの楽器でも調整がよければ充分吹ける、ということを今更ながらひしひしと感じております。

ところで、最近ヤマハバリトン最上位カスタムモデルYBS-82(130万円!)が発売されましたね。いつか吹いてみたいです。でも、やっぱりセルマーが欲しい!

いい状態の楽器を吹きましょう

私がたまたま「いい状態のバリトンの吹き心地がわかっていたから問題があることに気付けた」のだと思います。これを知らずに初めて吹いた楽器の状態があまりよくないと、自分にはその楽器を吹く才能がないのだと決めつけてしまうかもしれませんね。修理に出したから楽器には問題ないとは限らないようです。もちろん、その場のリペアマンさんはそれぞれ最善の処置をしてくれたことに間違いはありません。しかし、違う視点で見ると気付けることもあると思うのです。調整してもらったけど解決しない、と思ったら他のところに相談するのもありかもしれません。機会があればプロの奏者に相談してみてください。吹いてみてもらうのが確実です。しかしプロの方には簡単に吹けてもあなたにとっては吹きにくいということもあるでしょう。相性というのもあると思います。その場合、違う楽器も吹いてみることをおすすめします。悩みがあっという間に解決するかもしれません。ぜひ色んな方法を試してみてください。私も今後はそうすることにします。

最後に

いやぁ~、とても長くなってしまいました。だって、またバリトンが思いのまま吹けるようになって本当に嬉しかったのです。自分が楽しむために、YouTubeに公開した各曲の概要欄にバリトンのカラオケを優先して入れています。またひと頑張りしたいな、と前向きな気持ちでおります。また今後も経過を報告をしていきます。来月になったらまた落ち込んでたりして…。

もう一つネタがあったのだけど、明日、「7月の記ーその2」で記すことにします。超どうでもいい話。またお付き合いください。

今回私のバリトンを直してくれた札幌のお店はこちらです。

brasswork.jp

じっくりと時間をかけて問題を探り対処してくださいました。本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

つづく…